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​NOVELS

シュラウス

「ジエール帝国連邦の秘密化が進んだ楽園都市ヴェオンレギト、まぁ詳しくはシンテーア特設サイトを見てほしいんですけどねぇ(リンクはジエール資料室)。

 地下街の路地に関する都市伝説はかなり多いんですよ。秘密化が進む前、第一次宇宙大戦の時に惑星ヒェルニエからヅェアトロット人とエルトゥンユルント人を大量にヴェオンレギトに避難させたんです。それで地下居住区は大幅に拡張されたんですが、大戦が終わった後、ヴェオンレギトの秘密化と楽園化、奴隷制化が進むにつれ、人口を制限するようになったんですねぇ。

​ ヴェオンレギトは純正シンテーア人の一部認められた人だけしか入れなくなって、人口が一気に減ったんですよ。それで、大幅に拡張された地下居住区の大半は不要になり、薄暗い路地と廃墟だけが残ったんです。現在では深部でやばい店を構えたり、やばいことをする交流所を作る人がいたり、肝試しに使われたりしてるんで、変な都市伝説が大量発生してるんですよ。

​ヴェオンレギト西エリア深部

 これはヴェオンレギトに在住する友人から聞いた話なんですけどねぇ。彼、肝試しが大好きなんですよ。それで友人と行くのもいいけど、怖さが足りないから一人で行くことにしたらしいんですね。それで、今回は西エリア第5階層のある路地の深部を探索することにしたらしいんです。

 西エリア第5階層のワープステーションから居住区エリアの端まで歩いて、その奥の立ち入り禁止の看板の向こうの闇に入り込んでいくんですね。実はもともとこういう場所はシールドが貼られててほんとは入ることができなかったんですが、肝試しサークルが行政に抗議したらしいんですよ、だから半ば公認なんですよねぇ。

 当然中は真っ暗ですよ。マルチディスクのライトアプリを立ち上げて、光を照らしながら進むんですが、実は肝試しサークル公認のライトアプリがあって、「フォロクレギト」っていうんですが、そりゃまぁ小さな光しか出ないもので。

​ 本来はロマンチックな照明として使われるもんなんですけどね、肝試しに使うと怖さ倍増なんです。

 一般人の中級マルチディスクではデータ通信圏外なので、地図アプリで誘導なんてできません。来た道を判別する機能だけです。歩くこと40分程度、ちょっとじめじめして異臭のする道を少し進むと深部についたのかこれ以上先には進めないみたいなんですね。彼は最深部の構造をよく見ようと思って、普通のライトアプリを起動したんです。

 強い光がパーッと照らすんですが…

そこは一面真っ赤、地面も血だらけ、今まで大して気にならなかった匂いが、血の匂いだとわかって一気に匂いが充満するんですね。友人は驚きと吐き気で声にならない声をあげたらしいんですよ。

​ それで彼、気絶してしまったらしいんです。

 目が覚めると彼は全部思い出して、ダァーっと駆けて駆けて一気にそこから逃げ出したらしいんですね。しかし気づいたんですよ、あんな血まみれの場所にへたり込んだのに、服に血痕一つついてないんですね。彼は西エリア在住の友人を一人呼び出して、再び向かおうとするんです。

 「あのさー、かくかくしかじかなんだよー」

 彼と友人は向かうんですね、まぁ昼間でもそんなところ電気通ってないんで、十分怖いんですが、今度は普通のライトアプリで向かったらしいんです。歩くこと32分、彼は思うんです。

 「あれ~こんなに近かったかな。」

 しかもないんですよ​、例の真っ赤な路地。地図アプリの道筋保存機能を見てもあってるんです。おかしいのは地図アプリを見ても、前回の歩行時間は34分ですって出てるんですよ。

 「いやぁ間違いなく、40分は経ってたんだよなぁ、昨日時計見たときは」

 彼は混乱しつつ友人に言うんですよ。

 当然友人は

 「夢でも見てたんだよ」

 なんてことを言いますよね、彼は腑に落ちない様子で、ずっと

 「あれぇー?」

​ を繰り返すだけだったんですよね。

 

 後日、彼が友人から聞いたのは、西エリアで活動している「レベル0惨殺サークル」があるということ。レベル0ってのはヴェオンレギト特有の奴隷みたいなやつなんですけど、こないだ見たのはそれの会場跡地だったかもってわけですよ。

 ただ、服にない血痕やあの時間の差は何だったんでしょうね、これだけはいまだに結論が出せずにいるんだそうですよ。 

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